「STP分析」とは何かご存じですか?マーケターなら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
STP分析とは、「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」から成り立つマーケティングの分析手法です。これを活用すれば、自社の商品・サービス、市場やターゲットをもっとよく理解することができますよ。
よく知られているマーケティングフレームワークですが、マーケティング初心者の方は何から始めていいかわからないですよね。
そこで、ここではSTP分析の基本とメリット・注意点、分析の進め方や成功事例を説明していきます!
STP分析とは
STP分析は、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の3つから構成される、顧客主導型マーケティングのフレームワークです。フィリップ・コトラー氏によって提唱され、現在では多くのマーケティング企業で利用されています。
主に新商品やサービスを世の中に出す際、戦略を構築するために活用されています。B2BとB2Cのどちらにも使えますよ。
STP分析の目的は、さまざまなニーズを持つ大きな市場を小さな単位に分割し、そこから自社が最も収益を上げられる集団を特定したうえで、その顧客と良好な関係を築くことです。
多くの企業にとって、全ての顧客を対象にしてビジネスを展開することは難しいですよね。そのため、自社が効果的に利益を上げられる市場を特定し、その中で競争優位性を築くための戦略を練る必要があるんです。
STP分析は、これらの課題に対処するための有効なフレームワークとなっています。
一方で、「STP分析はもう時代遅れになってきているのでは?」との声もあります。
現代のアジャイル開発やリーン・スタートアップの時代において、最初からターゲットをきっちりと設定し、競争優位性を確立するのは時代にそぐわないのではないかというのです。確かに、STP分析は提唱から数十年が経っているのも事実ですね。
しかし実のところ、近年消費者が触れる情報がどんどん膨大になっていくなかで、STP分析の重要性はより一層高まっています。
STP分析によって、最初に狙うべき市場やターゲットをはっきりさせることで、初期段階での設計や開発をスムーズに進めることができます。
また、狙ったターゲットに対する評価を検証し、迅速に修正していくことも可能です。今後STP分析がますます重要になると考えられます。
それでは、STP分析の3つの要素について詳しく説明していきましょう。
S:セグメンテーション
セグメンテーションとは、市場をある基準に基づいて分類し、異なるグループに区分けするプロセスを指します。この分類された部分を「セグメント」と呼びます。市場を分割する方法はさまざまですので、企業は自社の商品やサービスが提供される市場の構造に合った分類方法を見つける必要があります。
以下は、代表的な4つのセグメンテーションです。
これらのセグメンテーションは単独で使うだけでなく、それぞれのセグメンテーションを組み合わせながら使うこともよくあります。
なお、市場を分ける方法は多くありますが、必ずしもすべてが有効であるとは言えません。
意味のない分け方になってしまわないように、STP分析の提唱者であるフィリップ・コトラー氏は次の5つの条件を挙げています!
この条件を考慮したうえで、自社の戦略立案に適したセグメンテーションを検討していきましょう。
T:ターゲティング
ターゲティングは、特定の市場のなかから、企業が焦点を当てるべきセグメントを選定するプロセスです。前のステップで選ばれたセグメントの魅力を評価し、自社にとって最も適切な商品やサービスを提供するために、どのセグメントに焦点を当てるべきかを決定する必要があります。
異なる市場セグメントを評価する際には、以下の3つの要素に着目します。
このことを考慮し、競合他社よりも優位に立てるセグメントを選んでターゲティングをしていきましょう。ターゲットは、共通のニーズや特徴を持つ顧客の集合で構成されます。そのターゲットに対するマーケティングは、主に以下の3種類が用いられています。
P:ポジショニング
ポジショニングは、特定のターゲットセグメントに対して、どのように差別化された価値を提供し、自社がどのような立場を確立するかを決定するプロセスです。
つまり、競合製品と比較して消費者からどのように認識されたいのかを明確にします。
ポジショニング戦略を考える際には、ポジショニング・マップと呼ばれる図を作成することが一般的です。これは、消費者にとって購買に影響を与える2つの要素を軸にして、自社と競合他社の位置を明確にします。
ポジショニングマップを作成する際に重要なのは、軸が顧客が商品やサービスを選ぶ際の基準として妥当かどうかということです。
商品を差別化しようとして、顧客が関心を持っていない要素を軸に選んでしまうと、市場のニーズに沿わないポジションに自社を置いてしまう可能性があります。表の場合、「自社の顧客は本当に機能性を求めているのか」「少し値が張っても、機能性の充実を求めているのではないか」と、自社のニーズをしっかりと見極めましょう。
また、競合他社の位置を決定する際は、単に直感的な判断でなく、客観的な競合分析に基づくことが重要です。企業は、競合他社よりも価値が優れていると顧客に認識される位置に自らを配置することで、競争優位性を築くことができます。
ただし、確固たるポジションを確立していくためには、実際に提供される品質とサービスが約束され、そのポジションを市場に効果的に伝える必要があります。STP分析によってポジションを明確に定義した後は、それを実現するための具体的な戦術を検討していきましょう。
STP分析のメリット
STP分析は、「環境分析」と呼ばれる3C分析やSWOT分析と、「施策立案」のための4P分析や4C分析の中間に位置し、マーケティング戦略の要ともいえます。
弊社では以前、SNSで話題になるスイーツの考案をお手伝いしたことがあります。その際にはSTP分析のフレームワークを用いて、メディアに掲載する場合どのようなセグメントに刺さるか、運搬を考慮して冷凍で提供できるスイーツはどのようなものかを考えました。その結果、新たな商品としてテリーヌを販売することが決定しました。
このように、STP分析はマーケティングの色んな場面で役立つツールです。ここではそのメリットを3つにまとめてご紹介します!
顧客のニーズを整理できる
なんといっても、STP分析は顧客ニーズを理解するための有益なツールです。STP分析によって、各市場にいる顧客層や彼らのニーズが整理されます。そうすると、市場や顧客(ペルソナ)を具体的に描きやすくなります。具体的な情報を得ることで、製品やサービスの優れた点を際立たせる方法が明確になり、それがマーケティング戦略の策定や新しい市場を開拓する計画においても具体性を持って取り組むことができるようになります。
また、これは新規事業や新商品の販売にも有効で、「本当に新商品を購入してくれるユーザーがいるのだろうか」という疑問もSTP分析を行うことで解消できます。どの年齢層のニーズが高いのか、どの地域からの反応が良好なのかといった属性ごとのデータを出すことができ、マーケティング戦略の方向性を決めるコンパスになってくれます。
例えば、あるスポーツウェアメーカーは新たなフィットネスウェアを導入することを検討していました。STP分析を行った結果、自社の顧客を複数のセグメントに分類しました。「ランニングに特化した製品を求めるグループ」、「ヨガやピラティスをするのグループ」、そして「トレーニングジムで活動するフィットネス愛好者のグループ」などです。
それぞれのグループ特有のニーズを把握することで、ランニンググループには通気性が重要であることや、ヨガグループにはストレッチ性が求められることなどが明確になりました。この情報をもとに、メーカーはそれぞれのセグメントに合わせた製品を開発し、効果的なマーケティング戦略を展開しました。
自社のポジショニングや強みを明確にできる
市場の中での自社のポジションにいるのか、そして商品・サービスの強みなどを明確にできるのもメリットの1つです。プロモーションを行う上で自社のポジショニングや強みを理解できていなければ、チーム内で共通認識が持てず戦略が上手くいかなくなることもよくあります。STP分析を行うことで自社のポジショニングや強みが分かりやすく言語化され、組織内で共有・浸透できるようになります。このように、組織力の強化や活動方針の推進にも有効です。
例えば、あるカフェチェーンは市場での競争激化という背景からSTP分析を実施し、顧客層と競合他社のポジショニングへの理解を深めました。そして、「子供とくつろげる空間を求めている若い専業主婦」という市場セグメントを特定しました。
以前から彼らはファミリーセクションの設置などを徹底していましたが、これを機にカフェ内での子供向けイベントなど子育て中の専業主婦に焦点を当てたサービスを新たに導入。
結果として、このチェーンは子育て中の専業主婦を中心にポジションを確立し、競合他社との差別化を図りました。STP分析によって自社のポジショニングと強みを明確にし、特定の市場セグメントで成功を収めたのです。
競合他社との差別化・勝てる市場を狙いやすい
さらに、競合他社との差別化も図りやすくなります。
STP分析では、ポジショニングの工程で他社の商品・サービスとの比較します。どのような商品なのか、価格や機能などを他社と比較していくことで、差別化が図れます。くわえて、他社の状況を把握し自社の立ち位置を理解することで、他社との競合を避けて勝てる市場を選びやすくなることもポイントです。
ある自動車メーカーが、高級スポーツカー市場に参入したときの例をご紹介します。
STP分析を実施すると、市場が一般的な高所得者向けに広がっていることが分かりました。そして競合他社は、主に性能やデザインに焦点を当てていました。このメーカーはSTP分析をしていくなかで、自社のスポーツカーに魅了される若手起業家層を見つけ出しました。ここから、彼らが価値を求める要素に焦点を当て、車の性能だけでなく、カスタマイズオプションや非日常的な体験ができるようなエクスクルーシブ・サービスにも力を入れました。
結果として、若手起業家層に向けた独自のプロモーションやカスタマイズサービスの提供により、競合他社との差別化を図り、新しい市場で成功を収めました。このアプローチによって、彼らは特定のセグメントで大きな地位を築き、他社に先駆けて勝てる市場を開拓しました。
STP分析の手順と注意点
ではさっそく、STP分析を行う際に重要となる4ステップと注意点について解説します。
1.目的を明確にしよう
まずは、事業の目的とゴール(なりたい姿)を明確に定義することから始めましょう。そもそもSTP分析をする目的は、事業の目的を達成するためであることに他なりません。ですので、事業目的の部分をまず明らかにしてください。この部分が定義づけされていないままだと、後々STP分析の過程が上手くいかなくなります。
例えば、ターゲティングの過程でどれくらいの規模の層をターゲットにすべきかという選択に迷ったとき、「なんのために、どのくらいの規模層にするべきか」といった「なんのために」の部分へ立ち返るところがなく、うまく決められない可能性があります。また社内でも認識のずれが生じ、納得いかないポジショニングが設定されたと不満を抱いてしまう人が出てきやすくなってしまいます。
STP分析が単なる目的そのものにならないようにするためにも、このプロセスはとっても重要です。
2.必要な情報やデータを集めよう
市場のデータや顧客情報なくして、STP分析はできません。始める前に、必要な情報をまとめて集めておきましょう。特にセグメンテーションには、市場・顧客の情報が必要となります。ここで、4つのセグメンテーションを振り返りながら、どこからどんな情報を引っ張ってくるべきか解説しますね。
上部にある「地理的セグメンテーション」と「属性的セグメンテーション」は、政府や公共機関、研究機関などが公表している地理データ、および人口動態などのデータを活用しましょう。
「心理的セグメンテーション」は、価値観やライフスタイルなどを調査したアンケート結果を使うことが多いです。必ずしも自社が主体となって顧客に調査しなくても、調査会社や大手広告代理店が調査したものを参考にすることもできますよ。
「行動的セグメンテーション」は、顧客の購買履歴やアクセス履歴、来店時間などのデータが参考になります。その他、使用実態をアンケートで確認したものを使用することもあります。
ターゲティングやポジショニングにあたっては、競合情報も必要になってきます。他社のホームページや財務情報を確認したり、実際に商品を購入して調べてみたりして、競合の情報をまとめておきましょう。
3.実際にSTP分析を行ってみよう
それが終われば、いよいよSTP分析です。 セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを実際に進めてみると、決断に渋る場合も多くあります。行き詰まったら1つ前の工程に戻ったり、ひとまず先の工程に進んでみたりするといいですよ。必ずしも順番にやっていく必要はありません。
STP分析のフレームを活用しながら、市場としての魅力度・成長性・競争環境・自社のリソース・競争優位性が発揮できるかなど、総合的に考えたうえで狙うべきターゲットと自社の位置づけを決めていきましょう。
STP分析のアウトプットとして、段階を追って複数のターゲットを狙う戦略を立てることも可能です。
例えば、自社のリソースが競合他社と比べて不十分である場合、まずは小さな市場で着実に成果を収めていくことから始め、3年後や5年後に、別のターゲットを含めたより大きい市場に進出していけるような計画も効果的です。またその際に、業界や自社の課題をまとめておくとその後の戦略立案にも活かせます。弊社がLPガスに関して分析を行った時にも、「供給インフラ維持が困難」「人手不足」「消費量の減少」などの課題が明らかになったため、それをマーケティング戦略に活かしました。
4.STP分析をもとにマーケティング戦略を立てよう
STP分析の過程でターゲットと自社の位置づけが明確になったら、それを具体的なマーケティング戦略に落とし込んでいきましょう。ブランドとは顧客のなかでイメージ構築されるものなので、顧客にもそれが伝わっていなければいけません。
ポジショニング戦略をサポートするためには、マーケティング活動も一貫して同じ方向性である必要があります。提供する商品・サービスだけでなく、セグメントの特性に合わせて、購買体験やアプローチ方法を変えていくことも重要になってくるんです。つまり、マーケティングの4Pと呼ばれる、「商品(Product)」「価格(Price)」「プロモーション(Promotion)」「流通(Place)」は、策定したポジショニングを実現するための戦術ともいえます。
一般的にはポジションの確立や変更はすぐにできるものではなく、それなりの時間がかかります。それにもかかわらず、何年もかけて築き上げたポジションがすぐに失われてしまうことだってあります。一度望ましいポジションを築くことができたら、そのポジションを維持するためにも、一貫したパフォーマンスと丁寧なコミュニケーションを心がけてください。
有名企業の成功事例5選
STP分析を活用したマーケティング戦略を展開している企業は、身近にたくさん存在します。
誰もが知っている企業や商品・サービスをいくつか取り上げ、それぞれ「S(市場セグメンテーション)」、「T(ターゲティング)」、「P(ポジショニング)」を具体的にどのように設定していたのかについて、紹介していきます。
スターバックス
「スターバックス」は、米国シアトルに本社を置く世界最大手のコーヒーチェーン企業です。独自のブレンドやおしゃれな雰囲気が多くの人々に愛されています。
ペヤングソース焼きそば
まるか食品が製造販売するカップ麺のブランド、「ペヤングソース焼きそば」。本格的鉄板やきそばをイメージし、コシのある麺、飽きのこないまろやかな味のソースが人気を集めています。
ユニクロ
日本におけるファストファッションの代表的存在ともいえる「ユニクロ」。2000年代初頭のユニクロの安さ訴求から、現在のファストファッションの地位を確立してきました。「ヒートテック」や「エアリズム」といった機能性を高めた商品は、国内外からも好評を博しています。
ニトリ
「お、ねだん以上。ニトリ」のキャッチコピーで有名な家具およびインテリア小売業大手のニトリ。価格の安さや品ぞろえの良さに信頼が集まります。
スタディサプリ
「スタディサプリ」とは、リクルートホールディングスの子会社、リクルートマーケティングパートナーズが運営しているインターネット予備校です。スマートフォンやタブレット、パソコンがあればいつでもどこでも何度でも受講できるのがスタディサプリの最大の魅力といえます。
まとめ
今回紹介したSTP分析は、マーケティング戦略を練る際には必要不可欠なフレームワークです。
この分析は、自社の市場がどのような顧客に支えられているのかが把握する「セグメンテーション」、自社もしくは競合商品がどうなうな顧客に支えられているのかを明らかにする「ターゲティング」、自社と競合他社との相違を把握する「ポジショニング」によって構成されています。
これによって、顧客ニーズや自社のポジショニングへの理解を深めることができ、さらには競合他社との差別化も図ることができるようになります!
STP分析を行う際には、事業の目的を明確にすることから始め、必要な情報を集めてから行ってください。そして、そこからマーケティング戦略を練りましょう。その際、差別化を意識しすぎて顧客ニーズから離れていっていないか、背伸びしすぎた戦略ではないかをしっかり見極めるようにしてくださいね。
多くの有名企業も、この分析を用いて成功を収めています。ぜひこの記事を活用しながら、STP分析を行ってマーケティング戦略を推進していきましょう。
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